sickness



朝起きた時、どうも調子がおかしかった。

妙に体がだるい。



「ねえちゃん、顔赤いぞ? 熱でもあるんじゃないの?」

制服に着替えて下に降りると、弟の尽が私の顔をまじまじ見て言った。

「え?」

私は自分の額に手を当てた。

……よく分からない。もともと体温高い方だし……

「ほんと、あんた熱あるわよ?」

今度はお母さんが私の額に手を当てて言った。

体温計で熱を測ってみると……38度6分。

その数字を見た私は、急にぞくぞくと寒気がした。

「今日は学校休みなさい。お母さんが電話しておくから」

「う、うん」

私はおとなしく頷き、再び自分の部屋へと戻ることにした。




学校を休んで三日目。

熱はほとんど下がったけれど、お母さんに、治りがけが大事だからもう一日寝ていなさいと、学校へ行こうと準備していたところをベッドに引き戻された。

普通の風邪だったら1、2日で熱が下がりそうなものだけど、今回は三日目になってやっと下がったという状態。頭痛もけっこうひどかった。

お母さんの言う通り、今日一日おとなしく寝ていた方がいいかも知れない。


でも、体はほとんど回復しているわけで、いい加減ベッドの中も飽きてきた。

こんなに休んだら授業遅れちゃうよ…とかいらないことまで考えてしまう。


数学の授業も……部活の練習も……


……それよりも。


早く氷室先生の声が聞きたい……



……



私がとろとろとまどろんでいる時、階下で尽が誰かと話している声が聞こえてきた。

尽の友達でも来ているのかもしれない。

続いて階段を昇ってくる足音。


ガチャ


ドアが開いたのは、尽の部屋じゃなくて、なぜか私の部屋だった。

「ねえちゃん、入るぞ。」

「もう! 部屋に入るときはノックでしょ?」

反射的に私が布団の中から不機嫌な声を出すと、

「ヘヘヘ……」

尽がいたずらっぽい笑みを浮かべた。

「なによ?」

怪訝に思って見ると……

コンコンとドアをノックする音がした。



「ノックをした。今から部屋に入る。」



……え? 


尽の後ろから現れたのは、なんと氷室先生だった。



えええぇぇーーー!?



尽がにやにやしながら部屋を出て行ったけど、パニック状態の私は気づかない。

「氷室先生!? か、家庭訪問ですか? あの、あいにく今は父も母も……」

「……落ち着きなさい。そうではない」

慌てて体を起こそうとして、少しふらついた。

「起きなくてよろしい。寝ていなさい」

「は、はい……」


私は再び枕に頭を預けると、側までやって来た先生を見上げた。

、具合はどうだ。」

「あの、お陰さまで、もうずいぶんよくなりました……」

「そうか……よろしい。それでは宿題を置いていく」

ごく当たり前のことのように、先生はそう言うと机の上に“宿題”らしき紙の束を置く。

「えぇ!?」

「“えぇ!?”ではない。今日までいったい何日欠席したと思っている。遅れを取り戻すためには、相当の努力が必要になる」

「……ですよね……わざわざありがとうございます」

うう、先生、病人にプレッシャーかけないでください……。

私がいじけていると、一瞬、先生の表情が緩んだ。


「……君を見て安心した。思ったより元気そうだな」

「……え?」

私は大きく瞬いた。

……もしかして、私のことを心配してくれてた……?


先生の顔を窺うように見ていると、先生は大きな背をかがめ、私が寝ているベッドの傍らに膝をついた。
綺麗に整った先生の顔がすぐ近くで私を見下ろす。


そして…


細いけれどしっかりした先生の指が、私の頬に触れた。


……ひんやりした。


指はすぐに離れたけれど。


い、今のは、何……?!?!


鼓動が早くなる。

顔が…頬が…熱い。私、きっと真っ赤になってる。

先生はすぐに立ち上がると、コホンと咳払いをした。

心なしか先生の顔も赤い。


「あ、あの……」

「宿題の提出期限は」

私が口を開くより先に、先生が早口で言った。

「……提出期限は、可能な限り早くだ。……可能な限り早く、学校に来なさい。……コホン。私はこれで失礼する」

先生はそれだけ言うと、くるっと踵を返した。

「はい……。あっ、ありがとうございました」

私は慌てて、部屋から出て行く先生の背中に声をかけた。


パタン、とドアが閉まる。

足早に階段を降りる音。

その後すぐ、尽が部屋から出て来て、先生を見送りに行くのだろう、下へ降りて行く足音が続いた。


しばらく下の物音に耳を傾ける。

玄関のドアが閉まり、程なくして耳慣れた車のエンジン音が聞こえてきた。



氷室先生の指の感触がまだ頬に残っている。

だんだん遠ざかってゆく車の音を聞きながら、私は幸せな気分で目を閉じた。




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期待しちゃった方(何を?)ごめんなさい;
私に甘いのは無理でした(TT) てゆうか、この主人公…オトメチックですね(爆)
管理人の性格上、二人ともこれ以上ないぐらいオクテです。ほのぼのカップル?…ちょっと違うか…

今回はゲームのお見舞いイベントをベースにしました。ゲームでは一週間…いや、もっとか?
どんな悪い病気なんだ、ってぐらい休みますよね(笑)
でも三日ぐらいじゃ先生お見舞い来てくれないかな?
 

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Created by DreamEditor



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